夢のからくり

雑記など

平井骸惚此中ニ有リ

 大正時代の帝都を舞台に、探偵にあこがれ推理作家の骸惚先生のもとに弟子入りした書生の河上君の成長を描くミステリ。
 富士ミスで数少ないミステリもがんばってる作品の一つ。あらすじだけにまとめれば、たぶん典型的なキャラクター小説やミステリー作品で終わるんだろうけれど、独特の講談口調が大正時代の雰囲気や、そこに生きるキャラクター達をいきいき描いていた。またミステリとしても、全巻に渡って骸惚先生が河上君に説き続け、そして自分自身も悩み続ける探偵のあり方というか、その傲慢さ招く問題について大きく扱うという特徴があり、飽きることなく最後まで読むことができた。その他にも毎巻本文中にでてくるタイトルの扱いなどもおもしろかった。
 しかし、だらける前に全五巻できっぱり止めるのもいいけれど、あきらかに河上君の成長はある意味これからが本番であるし、唐突に終わってしまった感が強く残ってしまい、いろんなことが中途半端に終わってしまった気がしたのが残念だった。